日本語論文では、符号の使い方が様式として明確に確立されていません。また分野によって異なる基準が採用されている場合もあります。基本的には、一つの論文の中で統一性を保つという点と、掲載される雑誌などで定められている書式や使い方に従うという点が重要です。この二点は符号の使い方に限らず、日本語論文における注や参考文献の書き方にも同じことが言えます。
日本語の句読点には句点と読点のそれぞれに2種類のものがあり、ある文章で使用されるのは原則として1種類ずつです。また日本語の表記には縦書きと横書きがありますが、どちらで書くかによって使用する句読点が異なります。次に句読点のセットと縦書き横書きの対応関係を示した表を示します。
| 読点 | 句点 | 縦書き | 横書き | |
| @ | 、 |
。 |
使用可 |
使用可 |
| A | , |
。 |
使用不可 |
使用可 |
| B | , |
. |
使用不可 |
使用可 |
縦書きでは@のセットのみ使用しできます。横書きでは@ABすべてのセットが使用され、どのセットを選択するかは不定です。しかしながら掲載雑誌や書籍で統一されていますので、必ずその規定を守る必要があります。そのときには全角と半角の違いにも気をつけましょう。
なお、読点を打つか打たないか、あるいはどこに打つかという問題は全ての書き手が思い悩む問題ですが、絶対的な規則はありません。しかしながら明確な規則がないからといって、まったくでたらめに読点を打つことは慎むべきです。読点がまったくない日本語の文章は非常に読みにくいものですし、逆に読点だらけのものも同様です。読点を打つ原則は、読み手が文意を取りやすくする、文意のあいまいさを避ける、の2点にあることを忘れないようにしましょう。
日本語論文におけるカギカッコは特定の語句を強調したり引用したりするときに使用します。また論文名や書名もカギカッコによって示します。なお、カギカッコ(「」)と二重カギカッコ(『』)の使い分けに関しては、中に入る語句の性格によって使い分ける場合と、階層によって使い分ける場合があります。
語句の性格による使い分け
「」 論文名・芸術文芸作品名・記事名
『』 書名・雑誌名、新聞名
磯田光一「鴎外の都市計画論」(『磯田光一著作集』第五巻,小沢書店)
竹中平蔵『研究開発と設備投資の経済学』東洋経済新聞社
階層による使い分け
カッコの中でさらにカッコを使用する場合は『』を使用する。
「日本の『神々』と西洋の『ゴッド』との違いにハーンはびくともしないどころか、そこにこそ論の中心を置こうとさえしている」
中黒は文中で使用する句切り符号の一つですが、読点よりも機能がやや狭く、使用場所は名詞と名詞の間に限られます。ただし下の列挙の用法では中黒の使用は控え、読点を使用するべきだという意見もよく聞かれます。
同格の名詞を列挙する
並列の名詞を並べ立てるときに使用します。また読点と組み合わせることによって、複数の並列要素をひとまとまりにして、より大きな並列関係のなかに位置づけることがあります。
イネ・ムギ・ブナ・アカマツ
音声・画像・映像によるマルチメディア教材の開発
小学校英語教育の実施に関しては,その目的・目標,カリキュラム,評価方法,動機付けなど,さまざまな問題点を検討する必要がある。
カタカナ語の意味の切れ目を示す(固有名詞も含む)
ビクトリア・アンド・アルバート博物館
ナーサリー・ライム
ブリティッシュ・カウンシル
ジョージ・ブッシュ
縦書きで小数点の代わりに使用する
五〇・三メートル
丸カッコ ( )
語句や文の後ろに挿入して補足説明を行います。また論文や書籍の出版年を示します。
『雨月物語』は上田秋成(享保19年生)が著した読本である。
小松英雄(1971)『日本声調史論考』風間書房.
ダッシュ −
英語論文における使用方法とは別に、二倍ダッシュ(――)にして論文タイトルの副題に使用に使用します(一倍ダッシュの場合もあります)。パソコンでの入力時には、一(漢数字)・ー(カタカナの引く音)との相違の注意してください。
「形式と意味の研究−テアル構文の2類型−」
「能読の世界――後白河院とその近臣を中心に――」
「日系企業立地選択変化の原因――労働性と市場性の観点から」
波ダッシュ 〜
時間の推移や、場所と場所を結ぶ経路を表します。また引用時の省略や型を表す場合に使用されます。なお、省略にはリーダー(…)を使用する場合もあります。
平成8年〜9年には
京都〜大阪の間
「草双紙と総称される一類は、〜それまでの仮名文字中心のものが、漢字交じりとなった。」
仮定を表す「〜てみろ」の用法について
疑問符・感嘆符 ?!
日本語論文での使用は控えましょう。
日本語論文には他にも様々な記号が使用されますが、英語論文に使用される符号を転用したものも多く見られます。英語論文における符号の使い方はこちらを参照してください。ただし、日本語論文においてどの符号が使用できるかは分野や雑誌によって異なりますので注意が必要です。政府による日本語表記の基準に関する資料はこちらで見ることができます。